クルーソー460と415、それぞれの「pod」「trans」各タイプ、
都合4種類を乗り比べました。
ホントはタンデム艇も用意下さっていたのですが、他の方が先に乗ってらして
順番待ちしている内にツアー疲れからか、乗ろうって気力がドンドン減っていきまして
「自分の志向する方向性とは 商品特性が異なるから、まあよろしかろう」と、
結局乗らずじまいになってしまいましたが、後から考えると惜しい事をしました。
まず460と比べた415の船足です、太くて短い分遅いかと思われましたが、
浜の沿岸を軽く漕いだ程度では、さして差を感じませんでした、快速です。
つまり415の ひろーい幅は、フラット且つワイドなボトムが理由なのではなく
河川の中流域での使用時に、サイドをぶつけちゃった時の
セフティマージンとなっている、エアチューブの太さに因るからなのでしょう。
また1次安定についても、65kg程度の僕の体重では、違いが判りませんでした。
460、415共に、乗ってからは勿論、一番ヒヤッとするであろう乗降の際にも
全く何の心配も要らないって感じです。
この両艇の船足や 安定性の比較条件が、20kmを超える距離ならどうか?であるとか
荒波に揉まれた時のピッチングは如何か?ってな hardな話になれば 出てくる感想は
或いは変わるかもですが、一般ユーザーが舟出する気になれるeasy useなら
415、460の どちらを選ぶかは、好みの問題で良いと思います。
あえて言うなら、川の中流域での使用を視野に入れるなら415の方が
より太いエアチューブと、より短いスターン長を備える点で より有利でしょうか。
ただし415であっても、激しく前方荷重してもバウラダーの切れは良くなかったです、
つまり良かれ悪しかれ、直進性の強さが目立ったって事です。
川舟のようにボトムがフラットでない為、キールが引っかかるのでしょうね。
何でも回頭性を より高める為にロッカーを深くするパーツも用意されているそうなので、
瀬が連続する様なゲレンデでの使用時には、それを組んだ方がよろしいかと。
それ以外は基本的に460の方がキール長が より確保出来ている分 お薦めかな です。
そして「pod」「trans」については、僕は「pod」に魅力を感じます。
確かに「trans」の方が数kg軽量ですし、収納時に数cm薄くなります。
(上が trans 下が pod。 遠近法以上に、厚みに差はあります)
しかし重量については、 キャンプ用品を積んでしまえば誤差の範囲ですし、
厚みについても、バスやフェリーでの移動時には さしてメリットを感じないと思います。
メリットを挙げるなら、自宅での保管時に「trans」の方が場所を取らない点と、
(キャリアバッグのままではなく、フレーム状態で片付けるって言う意味で言ってます)
尺の長い荷物をシート付近からバウ先端まで使って収納しやすい点になるでしょうか。
しかし僕にとっては、自宅の収納場所の問題も、釣竿等の長尺モノの運搬も無いので、
購入に際しての大きなアドバンテージとはならないのですね。
「pod」の魅力は、外界から艇内が シーソック + 船体布 で2重に隔てられている安心感、
波を超える際の 剛性感、と言った感性的なモノに加えて、
アクシデントで船体布が破れても、pod 部分の浮力で自力航行が引き続き可能な点、
船体布までをもpod内に収納出来る事により 陸送時に水漏れの心配をせずに済む点、
航行時にスプレー越しに侵入してくる水が カーゴエリアにまで及ばない点、と言った
具体的なメリットが有る事です。
それよりも僕的に「ここがなあ…」と、気になったのは、
A】全福の広さ B】スターンデッキの高さ この2点から来る特性についてでした。
※ ここからはマニアック臭が漂う話であって、普通にツアーするだけなら
あんまりこだわる必要は無い内容である事を、先にお断りしておきます。
A】415に乗って、ハイブレイスからスカーリングでバランスを取る際であるとか、
CtoCロールで艇を起こす際に、横着が出来ない感が有りました、
つまり「しっかり深部筋を緩めて水面と平行に、フラットにならないと沈する」
あるいは「しっかりとパドルのフェイスを見続けないと、フィニッシュが不安定」
そんな感じになったんですね。
うーん左肩を落としきれていませんねえ、そのせいで右肩が沈んで なんとも不細工な。
同様の傾向は460でも無くは無かったのですが、程度は軽かったように思います。
先にも触れた通り、415は川での使用を視野に入れて開発されている為、
岩との接触時のマージンとして、太いエアチューブを採用した結果、最大幅が69cmと、
460の62cmより7cm、僕の艇のシオンの53cmとでは、16cmも違います。
上の図の左が 415、右がシオンのスカリングバランス時のイメージです。
オレンジの線が重心線で、コレがこの図の右方向に傾くほど沈し易い訳で、
つまり415の方がコケ難い反面、コケる1線を超えたら戻し難い訳です。
そしてコーミングの横端から 艇のシームラインまでの距離が長い 415の方が、
よりスカリングバランスの時の重心線が、沈方向に傾いてしまっています。
それを沈させない為にはシオンの時より、更にパワフルなスカリングか、
より強力なHipSnapか、もっと柔軟な腰の関節が、必要になる訳です。
460は415程ではないにしても、やはり若干シオンよりは起こし難さを感じました。
つまり全幅を少し狭くする一方で、もっとコーミングの横幅を拡げれば、
重心線の横方向へのスムース 且つ 大きな移動が実現できる事になり、
コケかけた時のリカバリー、謂わば「3次安定性」を高められるのになと思います。
要望A】:幅を60cm位にして、コーミングの横端を出来るだけ外側に!
B】バウデッキの高さは、そのまま膝周りのゆとりに繋がりますし
風に煽られて悪影響さえ出ないなら、全く問題を感じませんでした。
バウデッキに伏せてフィニッシュする型のロールも、バッチリ決まります。
しかしながらスターンデッキの高さは、いかさま頂けませんでした。
まず スターンデッキが高い事のメリットとして考えられるのは
「積載量UP」「波に揉まれた時のスターンの喰われ難さ」でしょうが、
積載量については、そもそも5m以下の艇で長期の、具体的には3日以上の
長期の船旅は現実的でない事から考えると、数リットルの増減は
メリットとして挙げる事は、あまり意味のない事のように思えます。
又 スターンがコンケープドしていれば話は別ですが
フラットな程度では さして「喰われ易安くてかなわん!」って事にはなりませんから、
この点でもあまり意味が無いように思います。
一方 スターンデッキが高い事によるデメリットは
「ウェザーコッキングが出やすい」「腰が痛くなってもストレッチし難い」
「最も一般的なロールである、ReyUp系のロールがやり難い」点が考えられます。
とは言え、多くの方のブログでの報告でウェザーコッキングは問題無いようです、
(ここからもビルダーさんの力量の程が窺い知れますね。)
しかし後ろに伸びをしたくてもデッキの高さ故に、少し反っただけで腰椎2番位が
コーミングエッジに当たってしまう事は長距離漕ぎの際にはNGではないでしょうか?
あとコブシ半分程度、長さにして4~5cm低いと、丁度良い位置なのですが。
そしてその低さはそのまま、ロール性能の向上に直接繋がると思います。
確かにファルトユーザーの何%の人がロールを出来るのか?と問われれば
限りなくゼロに近いってのが事実なのでしょう。
でも だからと言って「ロールのし易さなんて気にする必要が無い事」に
なってしまうのはどうなんでしょう? カヤッカーなら一度は
「ロールが出来るようになれたらいいな」と思う筈ですし(ですよね?)、
工業製品の優秀さって、その限界性能の高さが一つの指標になりますよね。
例えばラリーをやらない人でも、ランエボって良いよね?って会話する みたいな。
そこからも 1&2次安定性の向上、速度の向上と並んで、ロール性能の向上は
より善いカヤックである為に、叶えて頂きたい点ではあります、なんてな。
要望B】:スターンデッキを、今より4~5cm低くして欲しい!
結論として、僕自身は
「スターンデッキが5cm低くて、全幅が4cm狭く、コーミングの横幅を可能な限り拡げた」
460podタイプを、特注で受けて頂けるのであれば、是非欲しいな です、
どう考えてもバックオーダーが ひと段落付いた真冬の時期にしか無理でしょうけど。
んで、通常オプションとしては「ラージバウハッチを出来るだけ前方に移動させたモノ」と、
「コーミングエッジカバー」「システムカートフレーム」「ウレタンシーソック」って感じかな。