続きです「熱放散」と「空気循環」についての工夫の話です。
「熱放散の防止」は上方向と 下方向で、それぞれ考えます。
「下」は「地面への熱放散」と「湿気の気化熱」を防ぐ事になります。
まず「地面への熱放散」、感覚的には「下からの冷気」についてです。
実は「乾燥した空気」と言うモノは非常に優れた断熱素材でして
数値で言うと 熱伝導率が ポリエステルは1.26 綿は2.88であるのに対し、
0.0241 と50~100倍の 断熱性能を持っています。
なので 体温で温もったシュラフの中は真冬でも一晩中暖かい訳ですが
体重で押しつぶされたシュラフ下面は、その他の3面に比べて
空気量=断熱効果が圧倒的に少ない為、熱が逃げ易くなってしまいます。
そこで下に敷くマットによる断熱が必要になる訳です。
とは言えAmazonで調べても、マットは値段もピンキリ、厚みも様々で
冬のキャンプに どの程度のクオリティが必要なのかは悩ましい問題です。
そこで選ぶ際には 断熱材の性能等の表示に用いる「R値」に着目します。
どれだけ床に熱を逃がさないかを表す指標なのですが、
それは計算式
「熱抵抗値R=断熱材の厚さ÷熱伝導率
÷1000」から導かれ
つまりマットの場合 「2倍厚けりゃR値も2倍」であり、
「どんな熱伝導率の素材を使っているかに比例する」って事になります。
ただし同じR値であってもメーカー毎に異なる条件の下で算出している為
「何℃まで暖かで居れるか」が A社では「R=3なら-5℃」とあるのが、
B社では-3℃、また他では「R=5なら-18℃」と
係数に比例してる?ってデーターが出されているのが現状です。
つまり同じメーカーでの商品XとYの性能比較なら信頼できるのですが、
似たようなモノでもメーカーが違えば参考にしか出来ない事になる訳です。
またシルバーシートのR値は、厚さ10mmで0.5程度とされていますが、
これはクッションのスポンジ部分の厚みと、その素材自体の断熱性能から
導かれている数値のようで、アルミによる赤外線の反射については
考慮されていないのではないでしょうか、若干過小評価気味に思えます。
その点について とあるサイトで「倍のR=1で見ても良いのでは?」と
語られていましたが、実感として僕も同感です。
そのような状況なので、厳密な概念ではなく 荒々の話ですが
12月前後に平地でキャンプする場合(最低気温0℃前後)の、
具体的な合計R値の目安としては「4前後有れば充分」が相場の様です。
そしてこの物差しで、今回の実験で使ったアイテムを眺めてみると
ノースイーグルの「ふんわりインフレーターマット」がR=2程度、
100均のペラペラシルバーシート(ペラ銀)が2枚でR=0.5位として、
合計のR値は せいぜい2.5止まりです、そら寒いわなあ でした。
なので後日 今回のラインアップに加えて、
手持ちのアイテムだけを追加投入して再試をしようと思います。
具体的にはフォームマットは何れも大体「 R=1少々」との事なので
キャプスタのソレを追加してR値合計を4足らずまで引き上げての追試です。
ただこの案だと カヤックは勿論 スクーターでも「積みきれるかなあ」です、
なので高性能&小型&お手頃価格となると、
候補としてはR=3.4の「サーマレスト トレイルスカウト」が最右翼ですね、
これとペラ銀とのコンボで、ほぼR=4ですから必要充分だと思われます。
次に下からの湿気、と言うか 正確には
「水分のインナーテント内への侵入」と「その水分の気化時に奪う熱」の
問題についてです(結露の問題は「上からの湿気」なので後ほど)。
結論から言うと、通常は気にしなくて良いのではないでしょうか。
インナーのグランドの防水性能は、大抵2000mm以上はありますから、
窪地にテントを張っていた、急に豪雨に見舞われた、設営地が水溜りになった、
こんなアンラッキーでもない限り、普通の体重の人の寝姿程度の
荷重による圧では 床面から水が染み出して装備を濡らす事は まあ無いです。
確かに「膝立ちした時の圧力は10000mm相当」と言いますから
そのような際に膝立ちすれば、スポットで浸水するでしょうが、
それならブルーシート等のフットプリントを敷いておけば無問題な訳ですしね。
次に上方への熱放散について。
これはひとえに、シュラフの性能に懸ってくる問題になります。
前述から 空気の層を厚くする程、高い保温力を獲得出来るのですから
保温性能だけで言えば、羽毛なり中綿なりが大量である程 結構な話な訳です。
ただカヤッカーやバイカーとして パッキングまで視野に入れて考えると、
単純に「大きい事はイイ事だ」とも言えない点が 悩ましいトコロです。
そこで寸法と性能の兼合を判断する際に、性能表示の文言が目安になります。
その性能表示には「最低使用可能温度」と「快適使用温度」があり、
若干メーカーによって表現は違いますが大体似通っています。
このうち「最低使用可能温度」は 実はあまり実用的な数字では有りません。
その意味は「寒さで眠れないが耐えうる限界の温度」との事で
「これを越える環境で使うと凍死しちゃうかも」って話なのですから、
「じゃあ一丁 ホントにヤバイかどうか試してみよう」なんて
危ない橋を渡る必要はないですもんね、電撃ネットワークじゃないんだから。
まあ うちの技術力はここまで行けるゾっ!みたいなアピールでしょうね
「カウンタックLP500の最高速度は302km/h!」みたいな。
なので僕達が着目するべきは「快適使用温度」となります。
その意味は「普通の寝巻で普通に眠れる温度」となっており、
「最低使用可能温度」プラス5~10℃である事が多いようです。
実際例で言うと、たとえばキャンプ場での予想最低気温が「8℃」であれば、
5℃ほどマージンを取って(予想外に寒くなる時も有りますからね)
「快適使用温度」が「3℃」より低い表示の物を選ぶのが手堅いようです。
そしてこの物差しで、今回の実験で使ったアイテムを眺めてみると
所有シュラフ「Snugpak スリーパー0+」は、快適外気温度が0度なので
普通の寝間着で快適に寝れるのは 最低気温が5℃を割らない範囲、
大体3月後半~11月前半位までの時期が守備範囲のアイテムであって
今回のような0度を若干割り込むコンディションでは役不足だった事は、
ペラ銀や、バイクコートを上掛する必要が有った点が裏付けていますよね。
だから今後「1年中キャンプするぞ!ただし平地のみ」って言うのなら
網走の 最も寒い2月の平均最低気温でも-10℃程だそうですから、
「最低使用可能温度」が「-15℃」前後の物 を選べば良い事になります。
例えば「
モンベル♯2」の最低使用可能温度は「-15℃」で、
寸法が
「21×42cm」と 今回のシュラフより「1
x7cm」大きいだけなので
バランスが良いよね と言う話になる訳です。
まとめると冬期のキャンプは「低温に対応した寝袋や、寝間着」等の装備や
「地面からの冷気を通さないR値の高いマット」で、
体温で熱せられた空気を テント外に逃がさないのは勿論の事、
できるだけ人体の周辺に留めておく工夫が必要 となる訳ですね。
長くなりすぎましたので、この編はここで切って、
次回に「番外編」として「結露」の問題に触れて締めたいと思います。